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Report

Milano Report

復活祭の飾り付けと共に春色一色に染まるミラノ。続々と登場するパスティチェリア(パティスリー店)や、春色に染まるテーブルウェア店、そしてデジタル時代に反した嬉しい雑誌専門店のオープンや、イタリア人の目から見た日本の侘び寂びの展覧会、、、今月も盛りだくさんでミラノ便りをお届けします。

多国籍なスイーツが楽しめる愛らしいイートイン・パスティチェリア、「ナイーブ」オープン

ラベンダーやバラの花びらの香りのミルクを飲みながら、「抹茶ミルフィーユ」、香り高い「パン・オ・ショコラ」、「ジャパニーズ・スフレ・ケーキ」、ポーランドの菓子パン、そして一押しの「カヌレ」に、ベルギーの「エッグタルト」、、モスコーヴァ通り51番地に、インターナショナルなスイーツを満喫できる「Naëve(ナイーヴ)」が今年オープンした。極上のケーキが奏でる音楽が味覚の中で渾然一体となり交響曲となる。「ナイーヴ」と音楽との間に密接な関係があるのは偶然ではない。なぜならオーナーのジャコモ・スキナルドと妻のイン・ジェンは、実はピアニストなのだ。コンサートのために世界各地を飛び回る2人。最高のインターナショナルなデザートのレシピを見つけることができる特別な場所を探していた二人は、ブレラ地区の中庭に面した窓のあるこの場所に一目惚れした。そして彼らが想いを形にできるパティシエを見つかるのに半年かけ、経験豊富なアレッシオ・ガヴァッツィに出会った。アレッシオ・ガヴァッツィは以前、ミラノのフォーシーズンズとホテル・プリンチペ・ディ・サヴォイアでパティシエ見習いとして働き、エグゼクティブ・シェフ、ロマーノ・レセンのもとでコミシェフとなった後、ペックとエンポリオ・アルマーニ・カフェ&レストランに移り、現在、「ナイーヴ」のパティシエに就任したのだ。程よい甘さの達人と言われ、アロマとフレーバーの絶妙なバランスを持つことで知られる彼が、ジャコモ夫妻とともに、革新的なスイーツアートを形成し始めた。ところで、なぜこの名前なのか、というと、「Naëve」は、素朴で夢想家という意味の「naïf」(フランス語)や「naive」(英語)を連想させる言葉遊びらしい。「エブリン」というオーナー夫妻による架空の女性をアイコンとしたアンティークピンク、ライラック、パープルに包まれた内装のナイーヴでは、日本とインドのスパイスを愛するアメリカからやってきたオーナー夫妻がパティシエを通して提案するインターナショナルな、ここでしか味わえないスイーツが毎日作られる。ベルギー産のバターや、日本から取り寄せた抹茶など、素材の拘りや完璧な甘さのバランスに魅了され、週末の朝は行列ができるほどだ。

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Naëve
Via della Moscova 51 Milano
営業時間:8:00-19:00 (日曜日は10:00から。月曜日定休)
Tel: 333 588 8285

創業100年を超える陶磁器メーカーの新ブランド、「ビトッシ・ホーム」

ミラノデザインウィーク2022を機に、ビトッシ・ホームがチンクエ・ヴィエ地区に初のブティックをオープンした。チンクエ・ヴィエ地区とは中心街から裏通りに入った、情緒あるエリアでセンス良くクオリティーの高いお店が程よく点在する小洒落たエリアだ。実際、フェラガモ一族が旅先で買い集めた小物を扱うことで有名な店、オリエンテーラ(Orienthera) も同じくサンタ・マルタ通りだ。ビトッシ・ホームはオープンしてはや2年、地域にすっかり馴染み、感度の高いミラネーゼに人気の店となっている。ビトッシと言えば陶磁器の老舗中の老舗。トスカーナ州モンテルーポ・フィオレンティーノで遡ることなんと1536年以来、長い王朝と伝統を継承してきたビトッシ家だ。その後継者グイド・ビトッシは、1921年にビトッシ社を創業、イタリア最古の陶磁器メーカーのひとつで、歴史的企業登録簿に登録されている。2007年からは、「ビトッシ・ホーム」をスタートし、デザイナーやアーティスト、クリエイティブな人々による革新的なコレクションを発表し、テーブルウェアの世界に進出した。ブティック内には、テーブルセッティング術の本を集めた小さなリビングコーナーもあり、新しいインスピレーションを見つけることができる。明るく親しみやすい空間であると同時に、ブランドのカラフルで生き生きとした精神を反映し、イタリアの食卓を囲む喜びからインスピレーションを得ている。「ターヴォラ・スコンポスタ(Tavola Scomposta)」コレクションは、紛れもなくイタリア文化を表現し、ビトッシの伝統的な起源と強く結びつき、同時に現代的なスタイルによって活気を帯びている。また、ブランドの価値観、伝統、精神を結集させたリサーチによって選び抜かれた、ヴィンテージ・コレクションは宝箱のようなアイテムで、「ターヴォラ・スコンポスタ」のフィロソフィーを共有したラインとして過去と現在を結びつけている。ビトッシのシンボルであるセラミックが主役であることに変わりはないが、ガラス製品からカトラリーに至るまで、ヴィンテージ以外はほぼオリジナル製品として新しい質感や素材が組み合わされ、テーブルウェアを完成させている。グラスは6脚セット売りで、グラッパなど小さいグラスセット61€からワイングラスセット110€、お皿は小皿20€前後から盛り皿170€前後まで、比較的良心的な値段なのも魅力だ。

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BITOSSI HOME
Via Santa Marta 19, Milano
営業時間: 10:30 – 19:30 (月曜日は15:00から。日曜日定休)
Tel: 02.62063514

レアな雑誌から新刊まで!待望のFRAB’Sミラノ店 オープン!

今やデジタルの時代。雑誌も新聞も発行部数が右肩さがり。近年、エディーコラと呼ばれる街中に立つ新聞・雑誌販売店(日本でいうキオスク)が軒並み解体されている。MilanoTodayというミラノのフリーペーパー(&WEBニュース)によると、ロンバルディア州の州都では、この4年間で129のエディーコラが閉鎖され、イタリア全体ではその数は18%減少しているという。私たちが新聞を買わなくなったからだ。その代わりに、ペットの専門誌や、フードの専門誌など、特定のトピックに特化した月刊誌が好まれるようになった。どんなにデジタル化が進んでも印刷された紙媒体は、私たちの生活に欠かせないことを再認識させてくれるお店が2月にオープンし、かなり話題を呼んでいる。長年にわたり雑誌愛好家のためのデジタル・リファレンス・ポイントであったFrab's magazinesだ。実際、世界中の雑誌を読んだり買ったりできる場所が今、ミラノで増えてきている。雑誌を読むことに特化したコーナーがあるカフェも増えているし、その中でも最近オープンしたFrab's magazineは、ありとあらゆる雑誌を購入できるオンラインでもある。まるで美しい出会い系サイトのように、Frab's Magazinesでは、オンライン・カタログをスクロールしていると、思わぬ雑誌の新たな発見もある。例えば、『Terrible People』なんて名前の雑誌があったり、『Meantime』 という名前だったりと、普段、書店で目にしない雑誌との出会いがある。また、フェミニズムの問題を扱う独立系雑誌『Frute』 があると思えば、ミラノに居ながらにして 『British Vogue』が入手できたり、もちろん『Wallpaper』の新刊も購入できたりする。そんな雑誌をネットでなく、実際に手に取って、見て、吟味して、購入できる書店が2月18日(日)、ミラノのポルタ・ヴェネツィア地区に2店舗目(1店舗目はロマーニャ州フォルリ)としてオープンした。オープンを待ちわびていたのは、『The Face』や『Interview Magazine』の最新号を手に入れようと店内に殺到する熱狂的な人々で、紙媒体の「バラ色の未来」を予感させた。「雑誌はモノの感覚を失った人々にとって具体的なもの。 触れて、紙の(印刷の)匂いを嗅ぎ、活字を読み、むさぼり、消化しなければならない、何ページも何ページも。(FRAB’S公式サイトより)」

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Frab’s Milan Porta Venezia
Via Sirtori, 11 Milano
営業時間: 11:00 – 19:30 (無休)
Email: info@frabsmagazines.com

イタリアと日本の一番カッコいいデザインの対話展

3月22日から6月9日まで、「オリジン・オブ・シンプリシティ・20ビジョンズ・オブ・ジャパニーズデザイン」(シンプルという概念の起源 ・20の日本デザインのビジョン) という展覧会が、ADIデザインミュージアムで開幕した。イタリアン・デザインでは最高峰のアワード、コンパッソドーロの財団の歴史的なコレクションがずらっと並ぶミュージアムが会場。その格式高いミュージアムでイタリアの歴史を司ってきたデザインに囲まれて開催されているこの展覧会は、2025年、大阪・関西万博イタリアパビリオン文化部門ディレクターのロッセッラ・メネガッツォ氏がキュレーションし、150点の日本の職人やデザイナーの作品を一堂に会する。「デザイン」と聞くと、「ファッションは詳しいけどデザインはちょっと、、、」と、いう人をよく聞くが、実はファッションよりも身近な親しみ易い存在だ。例えば私たちの生活に欠かせない家具や照明。当たり前のように、無意識に日々「必需品」として使う人も少なくないだろう。でもそのどれもが古く昔から現在も未来も、「デザイン」という力とそれを製品化してくれるメーカーの力によって私たちの生活が成り立っている。そして、「シンプルなデザイン」こそがカッコいい!と言ったのが、遡ること室町幕府の8代将軍足利義政だったそうだ(「カッコいい」、という表現であったかどうかは別として、、、)。これは会場構成とグラフィックを担当されたグラフィックデザイナー、原研哉氏の記者発表会での言葉。実際、足利義政によって栄えた東山文化こそが、日本の美意識の原点、「わびさび」文化。そこから茶道も発展した。展覧会の会場には、茶道で使う茶杓、それも千利休の孫にあたる千宗旦が実際にお茶席で使用した茶杓だそうだ。また、日本のデザインを代表する倉俣史朗や、イサム・ノグチ、イッセイミヤケなどの作品、更には、廃棄される畳やい草に生分解性樹脂(醋酸セルロース)を混ぜ合わせ茶杓を象ったHONOKAの作品は、昨年のミラノサローネ国際家具見本市で同時開催される若手デザイナー展示、サローネサテリテで最優秀賞を受賞した作品。このサローネサテリテ出身デザイナーで第一回アワードを受賞した田村奈穂氏の作品も3点展示されており(照明2点と葉の形のシリコン製のお皿)、古いものから新しいもの、職人技から革新まで、すべてが無駄を省いた究極の美しい「シンプルさ」を共通点に20のカテゴリーに分かれ、作品を取り囲むイタリアのレジェンドなデザインと日本のデザインとの「対話」に耳を傾け楽しめる希少な展覧会となっている。

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ORIGIN OF SIMPLICITY・20 Visions of Japanese Design
Piazza Compasso d’Oro, 1 Milano
会館時間:11:00 – 19:30 (休館日:月曜)
イベントコンタクト:a.delliantoni@adi-design.org

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