第1回 スーダンを訪問した理由
これから数回にわけて2009年3月4~17日にスーダン(南スーダン)を訪問してきた報告を行います。
まず今回は、「スーダンを訪問することになった理由」をご説明します。
私たちの会社イングラムは、2002年4月に『難民を助ける会』と共同で『ピースプロジェクト』を立ち上げる
契約を交わしました。
きっかけは、2001年の同時多発テロ後のアメリカによるアフガン侵攻、そして報道でクローズアップされた現地で地雷によって苦しめられている子どもたち
の映像です。
「私たちに何か出来ることはないか」
と考えた結果、「ライセンス会社であるイングラムが所有しているピースマークをラ
イセンス供与してそのロイヤリティを“正しい活動を展開しているNGO”に寄付しよう」というものでした。
さまざまな経緯を経て『難民を助ける会』にたどり着き、数回のアプローチで承認を得て契約させていただくこと
ができました。
その後、わずかではありますが毎年ロイヤリティを寄付し続けてきました。私たちも活動にそれなりの誇りを持っ
ていたつもりでした。
2007年4月、カンボジアを訪問する機会を得て、『難民を助ける会』の現地施設にも訪問することにしまし
た。
その際、段ボール8箱に及ぶTシャツ、文房具、お菓子などを携えて「きっと喜んでくれるに違いない」と期待一杯で訪問しました。
でも、そこのソチェトさんという女性の所長から聞かされた言葉でちっぽけな親切の押し売りは木っ端微塵にくだ
かれました。
「私たちに必要なのは魚ではなく“魚を獲る方法”なんです」
最初は言っている意味がわかりませんでした。
よく聞くと、「魚は食べてしまえばそれで終わり、でも魚を獲る方法を知っていれば、明日からも勇気を持って生きていくことが出来ます」
「カンボジアという国も今は日本をはじめとする先進国からの援助で成り立っています。でもこれらの援助がなくなってしまえばこの国はどうなってしまうんで
しょう」
「この施設では両親を失ってしまった子ども、地雷等で手足を失ってしまった子ども、いわば生きていく希望をなくした子どもを自立させるために活動していま
す。
ここでは、ただ単に生活の場を与えるだけでなく、ある程度の学問を身につけたうえで、縫製技術、テレビ、ラジオ等の電気製品の修理技術、自転車等の修理技
術、車椅子の製造技術等々を身につけさせ、自活できるように指導育成しています。ここで学んだ子どもたちは明日の魚を自分で獲る方法を身につけて巣立って
いくのです」
この言葉を聞き、何にも知らない自分が恥ずかしくなり、同時にもっと現実を知ることの大切さ、そしてそれを伝
えていくことの必要性を感じました。
“与える人間が持つおごり”、まさに気づかないで上からの目線でものを見ていました。
この経験で『支援活動とは何か、本当に現地で支援活動をされている人々から学び、それを自分たちで伝えていこう』と決意しました。
2008年に「アフガニスタンを視察したい」と要望しましたが、日本人ボランティアの拉致、殺害事件が起きて
しまい、かないませんでした。
「じゃあ、最も悲惨な現場を見せてください」とお願いしたら「それでは南スーダンに行きましょう」ということになったわけです。
今は帰国して、原稿を書いていますが、1月にスーダン行きが決まった後は、「自分の身に起こることは仕方ない
けれど、お世話になる皆さんに迷惑をかけられないな!」というプレッシャーと“万が一のときの覚悟”を決めるのに必死でした。
株式会社イングラム
代表取締役 加藤勉
*次回「スーダンまでの道のり-1」に続く
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