London Report
10月最後の日曜日、真夜中に時計の針が1時間戻され冬時間に切り替わり、家の軒先に飾られたカボチャのランタンやハロウィンのデコレーションが、一段と秋の深まりを感じさせるこの頃。寒さに負けず今回もホットな情報をお届けし致します。
Prg-1
二人で行ったカフェ、公園のベンチ、音楽… 誰にでも別れた彼氏や彼女を思い出させる物事がいくつかあるのでは?その中でも厄介なのがタトゥー。永遠の愛を誓って入れたはずの好きだった人のイニシャルは、いつまでも消えずに残ってしまうのだ…。そこで今回マッチングアプリTinderとタトゥーパーラーSixty Inkがタッグを組んで、ポップアップイベント「Ink Twice」を行なった。Tinderのリサーチによると、デート中の若者の5人に3人は交際相手のためにタトゥーを入れることを考えているのだとか。今ではタトゥーを入れているスポーツ選手や芸能人を当たり前のように目にするが、実はシングルの若者の半数近くが過去の交際関係を思い出させるボディーアートを後悔しているのだとか。この問題を解決しようと10月11日から3日間行われたこのイベントでは、3人のタトゥーアーティスト達によって、無料でタトゥーの修正が受けられるというもの。これには依頼者が事前にウェブサイトから相談の依頼をし、アーティストたちが了承すればサービスを受けることができる。選ばれた人もそうでなかった人にもスタッフからの一言、「タトゥーとヘアーカットは恋愛がらみの理由でするべからず」だそう。
Prg-2
家具のデザインからレストラン経営まで様々なビジネスを手がけ、1960年代のイギリスの家庭に、モダンでシンプルなライフスタイルをもたらしたイギリスを代表するデザイナー、サー・テレンス・コンラン。彼が1973年に設立したライフスタイルショップ 「The Conran Shop」 が、カンパニーの新たな時代と方向性を見据え、先月 Sloane Square にフラッグシップショップをオープンした。赤い煉瓦のジョージ王朝時代に建てられたタウンハウスにある店内は、3つのフロアーに分かれゆったりとした空間。壁にはエクスクルーシブなアートワークや大きな壁画が飾られ、生活を彩るユニークなプロダクトで溢れている。Matthew Hilton、Daniel Schofield、Samuel Wilkinsonなど、インハウス・デザイナーたちが手がけ、心機一転したコレクションは、生活空間を住みよく楽しくするために考え抜かれ、どれもデザイン性と機能性を共に備えたプロダクト、ここで扱われる商品のほとんどはブランドのオリジナルなんだそう。コンラン卿が世界中を旅しながら、他では見つけることができない品々を持ち帰ってきたように、ここでしか見つけられない、アイデアやインスピレーションがみなぎったプロダクトに出会えるお店。
Prg-3
イギリスの放棄された建物ランキングで第2位に輝いた「St Dunstan-in-the-East」は、ロンドンの高層ビル街に隠れた癒しの公園。TikTokで配信された公園の動画が100万回再生を超えるなどし、近頃人気のスポットとなっているようで、訪れた日にはウェディングの写真撮影が行われていたり、カップルで撮影する人の姿もある中、都会の喧騒を逃れここで静かにランチを楽しんでいるビジネスマンたちには少し迷惑な話かもしれない。元は11世紀に教会として建てられたこの建物、St Dunstan という名は、黒魔術とハンセン病から生還し悪魔にも会ったという、後にカンタベリー大司教となった修道士の名前がつけられているのだとか。どうやらこの場所が公園となるまでには紆余曲折あったよう。1666年に起こったロンドン大火「Great Fire of London」によって大きなダメージを受けた後、セントポール大聖堂を設計したことでも知られるイギリスの建築家 Christopher Wren によって塔が再建されるも、1941年には第二次世界大戦でドイツの爆撃を受け、塔と尖塔、北側と南側の壁を残すばかりという姿になったまま、再建されることなく放置されてきたという。1967年ロンドン市はこの教会を立て直すのではなく、公園にしたことで今では都会のオアシスとなっている。
Prg-4
「アレ・ブレ・ボケ」と形容される作風で、日本の前衛的写真の先駆者として60年代から活躍し続ける森山大道さんの展示会が「 The Photographers Gallery」で10月6日〜2月11日まで行われる。ロンドンでは2012年テートモダンで行われた、ウィリアム・クラインとの合同展示以来、今回は2度目で初の単独展示会となる「A Retrospective」では、200点以上もの作品と巨大なインスタレーションで、フォトリアリズムとの関わり、反省期となった80〜90年代、写真と自身の本質探求、リアリティーの反映、記憶と街の絶え間ない記録、アーカイブの再発明などを年代ごとに追って展示。また、1フロアー全体をライブラリーとし、ポスターやレコード、代表作「にっぽん劇場写真帳」「写真よさようなら」「Provoke」など英国初上陸のレアな写真集や雑誌の販売も行われ、すでに完売しているものもあるよう。自らをストリート・カメラマンと呼び、日本や世界のストリート・スナップを60年以上も歩いて撮り続けてきた普遍的経験は、荒木経惟さんや東松照明さんといった日本の写真家と並び、世界でもリスペクトされている。