Milano Report
春のような太陽と共にやってきたファッションウィーク真っ只中のミラノ。
中心街へ足を踏み入れてみると、普段、絶対目にしないファッションの人たちが目に飛び込んできて楽しめます。また、この期間に引っ掛けて美術館で開催されているファッション・イベントに人が殺到。4月のイベントのプレビューなども盛んなミラノより旬な話題をレポートします。
カーニバルにイチ押し!軽くて美味しいエッリのキアッケレとトルテッリ
カーニバルのお菓子といえば薄い揚げ菓子のキアッケレと、トルテッリという一口サイズのドーナツのような揚げ菓子が定番。
2月はパスティチェリア(お菓子屋)やパン屋、スーパーなど、あらゆる店でキアッケレとトルテッリが売られ、「今しか食べられない!」という季節ものとあって、毎日飛ぶように売れる。その中でも、個人的には全体的に高得点な「エッリ」のキアッケレとトルテッリは、どちらも他店に比べ、軽くて甘さも程よく、バランスが取れていて美味しい。
ふすま粉のキアッケレもあっさりしていて、罪悪感が軽減されるだけでなく、味もいい。そしてトルテッリと言えば、通常、カスタードクリーム入りか無しか、の2種類なところ、エッリのトルテッリは全部で8種類もある!
チョコレート、カスタード、ピスタチオ、マロン、塩キャラメル、ザバイオーネ、シャンティリー、そしてクリームなし。どれも「さすがエッリ!」と頷ける、軽くて優しくて良い材料で作ったと分かる美味しい味!夕方には売り切れてしまうほどの人気だ
創業55年になるエッリは、ジュゼッペ・エッリ氏と妻のガブリエッラさんがピエモンテ広場にオープンして以来、その、小さな、小さな、お店のまま、娘たち(カテリーナとロレダーナ)、パティシエ(ルポ・ジュゼッペ)が、情熱と愛情を持って初代の味を受け継いでくれている。ここのマロングラッセも筆者としてはミラノでナンバーワン。
通常使われるアイシングをあえて使用しないことで、栗本来の味が楽しめ、シュガーカットにもなり、秋には遠方からも多くのファンがやってくる。トルテッリのマロン味にも、可愛くマロングラッセがひとかけら載っていて愛らしい。
Pasticceria Elli
Piazza Piemonte, 8 – 20145, Milano
営業時間:7:30 – 13:30, 15:00 – 20:00 (月曜定休)
クラシックカー愛好家必見!毎週日曜日の無料イベント
今春でまる3年目を迎えるミラノのサンデーモーニング・ラリーは、毎週日曜日の午前10時30分から午後1時まで、ミラノの中心部にある「中指の彫刻」が目印の、証券取引所前にあるアッファーリ広場で、気軽にクラシックカーと自由に触れ合いたい愛好家のための、「無料」のアポイントメント。
「ミラノのど真ん中にお気に入りのクラシックカーを乗り入れ展示したらどうか」と、考案者のカルロ・マリア・デル・コンテの粋な計らいで始まったこのイベントは、フェースブックで立ち上がった「ミラノ・クラシックカーのサンデーラリー」というグループでメンバーになり、自慢のクラシックカーを展示したい人は「今週末、行きまーす!」とレジスターするだけというシンプルで非公式な取り組みだ。
クラシックカーのオーナーが運転して集まり、それを楽しみにやってくるファンとの交流会。ただ見て楽しむだけに来る人もいれば、ファン同士で情報交換する人や、オーナーと直接話す人など、気軽に、自由にその時間を楽しめるのが人気の秘訣。
あっという間に人気が出て、常連ファンに加え、新たな愛好家も増える一方で、現在、フェースブックのメンバーだけでも3千人を超えている。決められた2時間半の間なら、何時に行ってもよく、多い時は100台ほど集まる日も!
中には座席に「VENDITA(販売)」と書かれた紙を置いている車も稀にあり、クラシックカーなのでかなりリスクではあるが、個人売買をする人たちもいる様子。何せ非営利なので会費もなければ、団体加入も不要。参加者に求められるのは、クルマへの愛情、礼儀正しさ、他者への敬意、そしてもちろん交通ルールだ。通行の妨げにならないよう、みな、キレイに並べて駐車しているが、クルマを「無料駐車場代わり」に放置しないようにしように〜と言う注意もあり、確かに便利な中心街、さっと用事を済まし時間内に戻るオーナーもいるようだ。笑
Raduno della Domenica Auto Storiche - Milano
P.za degli Affari, 20123 Milano
開催時間:毎週日曜日10:30 – 13:00
デザインの祭典プレビューは文化イベントに注目!
毎年4月にミラノで開催される家具とインテリアの見本市、「ミラノサローネ国際家具見本市(日本では通称ミラノサローネ)」。ミラノに隣接するロー市のフィエラミラノ会場で開催される見本市はもちろん、運営団体が主催する文化イベントのクオリティーも高い。特に近年、舞台芸術を学んだ代表が就任して以来、興味深いイベントが続き人気を集めている。その記者発表会が2月4日にミラノで開催され、3つの文化イベントが発表されたので紹介しよう。
まずはスフォルツェスコ城で開催される「MOTHER(マザー)」。会場となる「ロンダーニのピエタ美術館」は、スペイン軍の統治期に病院だった建物が、ミケランジェロの最後のピエタのために改装された。
そこでこの春、未完成のまま遺作となった傑作を包み込むように、光と音のインスタレーションが開催される。
今年、見本市会場では、各年開催の照明見本市が開催されるので、キュレーションは光の魔術師として有名なアメリカ人演出家、ロバート・ウィルソンが担当。はじめてミケランジェロのピエタを見に来た際に受けた衝撃が大きく、その場から1時間ほど離れられず、ふと頭に浮かんだエストニア生まれの作曲家、アルヴォ・ペルトの傑作、『スターバト・マーテル』 (悲しみの聖母)の音楽との共演だ。
サローネの会期中はなんと当時の楽器を使った楽団による生演奏。会期後も5月18日まで録音された音楽で引き続き開催される。
www.milanosalone.com/2025/02/04/mother/
また、見本市会場内では、 世界の主要都市の超ラグジュアリーな空間を数多く手掛けることで有名なフランス人建築家・インテリアデザイナーのピエール=イヴ・ロションによる「ヴィラ・エリタージュ」を開催。
見本市会場で1分、1秒を惜しんで走り回る来場客に、一瞬、立ち止まって、現実から離れ、美しいものに心を震わせる時間を与えてくれる展示。
www.milanosalone.com/2025/02/04/villa-heritage/
そしてもう一つの会場内での文化イベントは、アカデミー賞受賞映画監督として有名なパオロ・ソレンティーノによるインスタレーション、「ラ・ドルチェ・アッテーザ(甘い期待)」だ。私たちが日々当たり前のように経験している “待つ”という、イライラしたり、心配したり、という苦悩な感情を解放させてくれ、甘い感情の旅へと誘い込んでくれる展示。
www.milanosalone.com/2025/02/04/la-dolce-attesa/
土日は一般公開しているミラノサローネ、イベントだけでも一見の価値がありそうだ。
Salone del Mobile.Milano/ミラノサローネ国際家具見本市
会場:Fiera Milano, Rho
開催時間:4月8日- 13日9:30 – 18:30 (一般開放:12-13日)
Photo Courtesy of Salone del Mobile.Milano
ファッション界のピカソ、クリストバル・バレンシアガが、ミラノで蘇る!
パラッツォ・モランドで開催されている「バレンシアガ|シューズ・フロム・スペイン・トリビュート」展は、アートとしてのファッション、建築としての服で知られるバレンシアガの遺産を、スペインの靴の卓越した職人技と織り交ぜながら称えるトリビュート。
2025年2月、バレンシアガ生誕130周年を祝うこの展覧会は、ハビエル・エチェベリア・ソラが企画し、スペイン靴産業連盟(FICE)が推進、ミラノのウィメンズ・ファッションウィークにあわせての開催している。
「クチュリエは、デザインの建築家であり、形の彫刻家であり、色の画家であり、調和の音楽家であり、尺度の哲学者でなければならない」という言葉通り、クチュリエ以上の存在だったバレンシアガ。まるで大理石のように布を彫刻することができる服作りの達人のアーカイブが一堂に会する。
ミラノ在住のデザイナー兼スタイリスト、エリーザ・オッシノのスタジオがキュレーションするエキシビションは、パラッツォ・モランドの企画展示専用フロアと、2階の今回特別に公開されている美術館の部屋で開催。プライベート・コレクションやミュージアム・コレクションから集められた25着のアイコニックなドレスにあわせて、イタリアとスペインの審査員団によって選ばれた25足のスペイン企業がこの日のために制作したシューズを通して、バレンシアガの世界を発見する旅へと観客をいざなう。クチュリエのストーリーと現代ファッションへの影響を伝える貴重なアーカイブ資料、写真、ヴィンテージ雑誌が、この展示をより豊かなものにしている。
このプロジェクトの主役である靴は、ピコリーノ、プリティ・バレリーナ、チエ・ミハラ、ペドロ・ガルシア、マグナーニなど、スペイン屈指の靴ブランドによって作られた。
フランシスコ・カレラ・イグレシアス、アンヘレス・エスピナール、ヘスス・ロサドといった熟練職人とのコラボレーションにより、バレンシアガのシグネチャーであるライン、ボリューム、サルトリアのディテールを現代的に再解釈している。
時代を超越した彫刻としてのドレスの中で最も象徴的なドレス(左上から時計回り)
1. 17世紀のスペインのファッションにインスパイアされた1939年の「インファンタ」ドレス
2. 1965年にミラノ音楽院で着用したテレサ・ベルガンサの銀ブロケードサリードレス
3. ジバンシィとの会見のためにソンソレス・ディエス・デ・リベラが選んだ1955年のフューシャのカクテルドレス
4. グレース・ケリーをも魅了した1962年のアイボリーとラズベリーのイブニングドレス
5. ソンソレス・ディエス・デ・リベラのために制作された銀糸で刺繍された有名なアイボリーのシルクシャンタンウェディングドレス
展覧会の最後を飾る傑作は、スパンコールと金色のビーズで飾られた淡いピンクのシルクの豪華なイブニングドレスとガウンで、普段は一般公開されていないパラッツォ・モランドのフレスコ画が描かれた客間に展示されている。通常も惜しみなく無料で開放している美術館の豪華絢爛な部屋に見事に調和するミラー台のインスタレーションは圧巻。
過去と現在が交錯し、クリストバル・バレンシアガの並外れた才能に対する永遠のオマージュが表現される、ファッションとデザインを愛するすべての人にとって見逃せないイベントだ。
Palazzo Morando “BALENCIAGA | Shoes from Spain Tribute”
Via Sant’Andrea, 6 - 20121 Milano
開催期間:2025.2.21 – 3.2(入場料:無料)
開館時間:10:00 – 17:30(月曜休館)