JP | ENfacebook

Report

Milano Report

復活祭を迎えた翌日のイースターマンデーに世界中を悲しみに包んだフランチェスコ教皇の訃報。イタリアからの視点でこのニュースをお伝えすると同時に、ミラノの最新ニュースをお届けします。

グラッツィエ、パーパ・フランチェスコ!

復活祭の日曜日は、正午にヴァティカン市国の大聖堂、中央バルコニーからローマ教皇が祝福のメッセージを贈るのが恒例。
今年も体調不良を押して教皇たっての願いでバルコニーに姿を見せてくれたフランチェスコ教皇。
復活祭の翌日の月曜日も、パスクエッタ(小復活祭)と呼ばれる祝日を祝おうとした矢先、まさかのフランチェスコ教皇の訃報にイタリア中、世界中が悲しみに包まれた。
筆者はキリスト教ではないが、これほどまでに教皇の言葉や行動に心を動かされたことはなかった。日本ではアッシジの聖フランチェスコと区別するためにフランシスコと表記するが、ここではあえて実際の発音、「フランチェスコ」と表記したい。なぜなら、2013年に新教皇に選出された際、清貧を守ったことで知られる聖フランチェスコの精神からの霊感を求めながら、自身の教皇職をその上に築こうと決定した名前だからだ。
実際、この12年間、庶民や貧しい人、苦しんでいる人たちに寄り添った教皇として世界中の人に愛されてきた教皇は、まさに聖フランチェスコだった。
豪華な使徒宮殿でなく、簡素な「聖マルタの家」に住み、棺は歴代の糸杉と鉛とオーク材の3重の作りでなく、簡素な木製で埋葬されることを希望した。
イタリアでは教皇を「papa=パーパ」と呼ぶ。父親を意味する 「papà=パパー」はアクセントを二つ目の “a”に、教皇は一つ目の “a” に置いて区別するが、パーパ・フランチェスコに謁見の機会が与えられた人たちはテレビの取材で「とても温かい言葉をかけていただき、papa (教皇)でなくpapà(父親)のような存在です!」と、涙ながらに語っていた。
数えきれないほどの幸運な人たちの中には、「ある日、突然ベルが鳴り、ドアの向こうにパーパ様が立っていらした!」とか、カラブリアの沿道でストレッチャーに我が子を乗せて声援を送っていたら、「パーパ様が車を止めて降りてきて我が子にキスをしてくれた!」、などなど、心温まる映像付きのエピソードは尽きない。
葬儀の日、ジョヴァンニ・バッティスタ・レ首席枢機卿による説教は、フランチェスコ教皇の12年間に及ぶ星の数ほどある功績を称えたもので、中でも47回にわたる困難な使徒的訪問の一つ、危険を冒して実行された2021年のイラク訪問ではISIS の非人道的な行為によって苦しむイラク国民に寄り添ったことにも触れた。
教会の存在に大きな革命を起こし、すべての人に扉を開き、戦争は人の死でしかなく、家や病院や学校の破壊にすぎない、と嘆き、「壁を作るのではなく、橋を架けること」を呼びかけた。ただ、パーパ様がトランプ大統領による移民規制を非難していたことに対しては、ミラノの治安が年々不法移民によって悪化していることで異論を唱えるミラネーゼは少なくなく、同時に、「これ以上、一人も死なせたくない」と常に訴えているトランプ大統領の言葉はパーパ様の気持ちと同じであり、葬儀寸前に行われたゼレンスキー大統領との対談(交渉)が平和をもたらしてくれることを願う。
EU単独の軍事介入に反対したメローニ首相とトランプ大統領の良好な関係にも期待が高まる。4月26日(土)の葬儀後、パーパモービレ(パーパ様が愛用されていた車)に乗った棺は、ローマ市内の沿道を埋め尽くす人々に見送られながらサンタ・マリア大聖堂へ運ばれ安置された。逝去後迎えた日曜日、ヴァティカン市国の広場では、パーパ様の精神のもと育った数多くの若者も集まり故フランチェスコ教皇を悼み9日間続くミサ(2日目)が行われ、イタリア中が「グラッツィエ=ありがとう」とフランチェスコ教皇へ感謝の気持ちを贈った。

milano

ヴァティカン市国オフィシャルサイト:
カトリック中央協議会 - フランチェスコ教皇葬儀ミサ説教・和訳
https://www.cbcj.catholic.jp/2025/04/27/32158/

必見!ミラノが誇る彫刻家 アルナルド・ポモドーロ、オープンスタジオ開催中!

「球体は、子宮、地球、今日の世界を表現することができる完璧で、魔法のような形をしている......私は、神秘的で生きている、怪物的で純粋な内なる発酵を見つけるために、球体をバラバラにする。こうして私は、ピカピカに磨き上げられた表面とのコントラスト、不調和な緊張感、未完成の完全性を作り出す。同じ行為で、自分自身を絶対的な形から解放する。そしてそれを破壊する。しかし同時に、それを増殖させる」。
アルナルド・ポモドーロは、この本人の言葉にあるように、「スフェーラ(球体)」について、これまでにない深い考察で知られるイタリアの彫刻家である。そのアルナルド・ポモドーロのスタジオが6月1日まで週末のみ一般開放され、「スフェーラ(球体)」に関する資料が一挙公開されていて大変興味深い。
なぜなら球体は、アルナルド・ポモドーロの作品の中で最も象徴的な形であり、彼の国際的な成功を決定づけ、長い年月をかけて彼の真の「彫刻の二重人格」となった作品だからだ。
球体には3つ種類があり、1つ目が1963年に発表された「スフェーラ(球体)」。そして一番象徴的な存在となった「スフェーラ・コン・スフェーラ(球体をもった球体)」、3つ目が「スフェーラ・ディ・サン・レオ」だ。
「球体をもった球体」は1981年、箱根・彫刻の森美術館で開催された第2回ヘンリー・ムア大賞展で大賞受賞した作品でもある。ポモドーロの作品が世界的に名を馳せた秘訣の一つは制作方法にもあるのだろう。彼の芸術的発明は素材と結びき、素材と極めてマニュアル的な関係にある。ブロンズ作品はまず粘土から始め、そこに自分の手やさまざまな道具(ヘラ、ナイフ、クサビ、ロープなど)を使って印象づける。
丸いボリュームの造形から始めることはなく、常に彫ることから始める。そして石膏模型に移され、次にシリコン型に移され、ワックスがかけられ、古代の技法、蝋型鋳造(ロストワックス)を用い、これに彼の、特徴的なスタイルと詩的な要素が加わり、最後にブロンズ鋳造に移される。ミラノ市内で一番大きい作品は、メーダ広場にある、球体を縦に割って取り出したような「グランデ・ディスコ(大きなディスク)」だ。直径4.5mもあるブロンズ作品は、「彫刻が命を吹き込まれるのは大地からなのだ」という彼の言葉を体感できる一つだ。

Open Studio #3 |ARNALDO POMODORO “LA SFERA”
Fondazione Arnaldo Pomodoro
Via Vigevano 3 – Milano
開催日時: 11:00 – 19:00週末のみ一般公開。6月1日まで。
入場料:一般8ユーロ、割引5ユーロ

milano

*中央レンダリング画像(上下):Courtesy Salone del Mobile.Milano
*左上:工事中の展示風景。左下:アニェージの胸像。右上:壁一面に本が並ぶ圧巻の図書館でのカンファレンス。右下:ブレラ美術館外観

Es Devlin. Library of Light –Salone del Mobile.Milano
場所:Pinacoteca di Brera – Cortile d’Onore (ブレラ美術館-名誉の中庭)
開催時間:4月7日- 21日 - 毎日9:00 – 21:00 入場無料

ミラノサローネ 2025コミュニケーションキャンペーンが街をジャック!

今年も4月8 日から6日間、ロー・フィエラミラノで開催される、「ミラノサローネ国際家具見本市(日本では通称ミラノサローネ)」のコミュニケーションキャンペーンが街をジャックしている。
ミラノ市のシンボル的存在である路面電車、トラムなどがコミュニケーションキャンペーンを纏い、3月17日からなんと500台も街を横断している。
デジタル広告は国内13の空港と、ジェノヴァからローマまでの地下鉄や鉄道の駅、バス停など、1000ヶ所以上、3000台以上のモニターが設置され、イタリア全土もジャックしている。こういった現象はファッションウィークの比でなく、いかにミラノサローネが国を挙げての一大イベントであり(それだけの経済効果もあるということ)、また、多くの一般市民や観光客も巻き込み、楽しんでもらえるデザインの祭典であるか、ということがうかがい知れるだろう。
恐らくそれは、「デザイン」というものが、家具・インテリアにとどまらず、アート、芸術、音楽、光、そしてファッションや食、さらにはあらゆる「素材」まで、有形、無形、全てを巻き込む人間にいちばん近い存在だからだろう。電通クリエイティブ・イタリアが担当した今年のコミュニケーションキャンペーンは、まさに、家具・インテリア業界がいつも大切にしている、人間の身体と素材との自然な調和に着目し、「Thought for Humans.(人間のための思考)」をテーマにした。
木、金属、布、バイオプラスティック、そして無形素材である光を使った大胆でメッセージ性の高い広告画像がミラネーゼの目を惹きつけている。撮影はニューヨークのアーティストで、特にボディ写真を専門とする写真家、ビル・ダーギンだ。ミラノの中心街、ダンテ通りには撮影のバックステージ風景や、ミラノサローネの歴史を紹介するパネルが、ドゥオモ前からスフォルツェスコ城までずらっと並ぶ。
「デザインと身体が融合し、ひとつになるエモーショナルな旅:私たちの生活の質を向上させることを目的とした」と、ビル・ダーギンが語る「デザインのビジョン」を通して、今年もますます盛り上がりそうだ。

milano

Communication Campaign 2025: Courtesy _Thought for Humans_Salone del Mobile.Milano 2025

Salone del Mobile.Milano/ミラノサローネ国際家具見本市 主催
Vernissage :BILL DURGIN写真展


場所:Via Dante, Milano
開催期間:3月25日 - 4月15日 24時間オープン
ミラノサローネ会場:Fiera Milano, Rho
開催時間:4月8日-13日9:30– 18:30 (一般開放:12-13日)

ナヴィリオ運河を愛し愛され約半世紀、レストラン「イル・モンタルチーノ」

イタリア三大銘酒として知られるバローロ、バルバレスコと並ぶ高級ワイン、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。
1978年、その生産者とのご縁からこのレストランは誕生し、はやくも約半世紀が経ったいま、幾度かの改装を経たにもかかわらず、このレストランはミラノで最も魅力的な場所のひとつとなり、その魅力を今なお保ち続けている。
お料理は当然ながらモンタルチーノ・ワインの産地、トスカーナ料理、いや、モンタルチーノがあるシエナ料理だ。ナヴィリオの美しいロケーションにあるレストラン「イル・モンタルチーノ」の名物は、なんと言ってもピチ・アル・チンギーレ。
軽くスパイスを効かせたイノシシのラグーをモンタルチーノの伝統的なピチと呼ばれる太めのパスタに絡めて食す。なかなかの絶品だ。また、ブルネッロのワインで低温調理した牛頬肉のストーロ産ポレンタ添え、昔ながらのタリアータとジャガイモのソテー、タイムとペコリーノ・ディ・フォッサチーズを添えたポルチーニ茸、様々なバリエーションのタルタル・・・と、どれもエネルギッシュなトスカーナ(シエナ)料理で満足度は十分高い。
そしてなんと言ってもこの独特の内装と美しいテーブルセッティングは、居心地の良い豪華さを醸し出し、一種の風景画の中に飛び込んだようで、一度来たら誰もが虜になる
2023年には運河をさらに下ったところにあるサン・クリフトフォ教会の広場に面してモンタルチーノ・カフェがオープンし(昨年、紹介済)、世代から世代へと受け継がれ、オーナー一家の物語はこれからも続き、ミラネーゼを魅了し続けるだろう。

milano

Il Montalcino - Ristorante
Via Valenza 17, Milano
営業時間:12:00–14:30,19:30–22:30 (無休)
Email:info@ilmontalcino.it

サービス紹介はこちら管理プロパティ一覧はこちら
採用情報
友だち追加