Paris Report
オリンピックが終わったと思ったら、今度がパラリンピックで落ち着かないパリです。
オリンピックの開会式に登場した人達の衣装は“ディオール”の衣装が目立ちましたが、パラでは“ルイ・ヴィトン”の衣装が目につきました。
大統領夫人もLVのスーツでした。どちらにせよLVMHですね。
この夏、フランスがナチスドイツの占領から解放されて80年になる記念式典が行われました。
ヒトラーはパリの街の破壊を命じ『パリは燃えているか?』と部下に聞いたそうですが、パリは燃えず、今はオリンピックとパラリンピックの火が灯っています。
オリンピックの開会式は賛否両論ありました。パラリンピックの開会式を皆様はどう評価なさるでしょうか?
2週間前まで、スケートボードやブレイキンの競技場だったコンコルド広場が、パラリンピックの開会式の会場に作り替えられ盛大に行われました。
こんなに短期間で大ステージができるとは、フランスでは驚きの速さです。パラリンピックが終わるまで、地下鉄切符代は“倍以上”で主要駅もクローズ。道路の規制も多くセーヌ川の向こう岸に行くのが大変です。
トーチ
パラリンピックの聖火台にまた炎が灯りました。
雨にも負けず風にも負けない聖火を灯した聖火棒。『トーチ』というのですね。聖火はパラリンピック発祥の地、イギリスからルイ・ヴィトンの箱に入って届きました。100人のランナー達がフランス50都市を通りパリに届けました。パリではジャッキーチェン氏も参加していました。
そのトーチは今まで見たことのない素敵なデザイン。2本のワインボトルの底をつなげたようなシャンパン色のお洒落なトーチです。
流石!おフランス製。と思いきや、それはデザインのみで中身の心臓部は日本製でした。
こんな所にも日本企業が活躍しています。しかも大企業でなく愛知県の中小企業『新富士バーナー』が、今回のオリンピックとパラリンピック用に2000 本製造しました。
東京オリンピックの消えないトーチの実績を鑑みフランスサイドが発注しました。今回の課題は、風でも雨でも消えない聖火はもちろん、形、見た目を重視するフランス人。
トーチの上からの炎と走り出した時、まるで風にたなびく旗のような形のトーチの横から出る炎を!と難しいオーダーでした。そのため、燃焼部分とボンベの開発製造をしました。
普段はキャンプで使うコンロやランタンを製造しているこの会社は、過酷な環境でも消えない炎として、エベレスト登山隊にも採用されている商品を製造しています。
パラリンピックの開会式の最後に登場したトーチ。夕日を背にしてシャンゼリゼ通りを下り、コンコルド広場のステージで盛り上がり、チュイルリー公園の点火ステージに選手達は向かいました。そして、お馴染みになったバルーンに点火。
閉会式まで夜空に舞い上がり、パリを見守っているように浮いています。
エッフェル塔とのツゥーショット。世界で一番美しい街と言われる理由がわかります。
気球
開会式で聖火台に火が灯り、黄金の輝く気球が空に上がった瞬間、大きな驚きと感動がありました。
日没後に円い火を放った気球が地上60m上空で幻想的な風景を作り出しています。
チュイルリー公園の一角に設置された気球は、昼間は予約制で人数を制限して至近距離で見ることが出来る様になっています。予約は直ぐに定員で一杯になってしまう為、柵で区切られた場所から見学する人も多くいますが、気球が想像していた以上に大きいので、遠くからでも十分に楽しめます。
聖火トーチをデザインしたMathieu Lehanneur が気球もデザインし、仏電力会社EDFと共同開発して今回の気球が作られました。空に浮いた時、揺らめく炎は本物の様に見えますが、実はこの炎、電力によって水と光でできており、高圧噴霧ノズルが作り出す霧をLEDライトで照らしているのです。実際の聖火は気球の側に置かれたランタンで燃え続けています。
気球は、なんとフランス人の発明品で、モンゴルフィエ兄弟が1783年に熱気球の初の有人飛行を成功させました。フランス語で気球のことをモンゴルフィエと呼ぶのは発明家の名前に由来していたのです。
そして同じ年のその僅か11日後にジャック・シャルル教授が水素ガス気球の有人飛行を行い、その場所が今、気球が設置されているチュイルリー公園だったのです。その様子が描かれた絵は、気球に関するアイテムと共にマレ地区のカルナヴァレ美術館に展示されています。当時はこの発明品が大変話題になり流行ったことが、当時の食器の絵付けや家具のモチーフなどからも伺えます。
マスコット
オリ・パラが始まる前から、オリンピックとパラリンピックのグッズが、お土産屋、スーパー、デパートなどで多種多様のグッズが売られていました。
しかし買っている人を見たことがありませんでした。オリンピックが始まってから、ロゴのTシャツを着ている観光客をちらほら見るようになりました。オリンピック中旬になるとテレビの中継で赤いマスコットを頭につけたり、振り回したりしている人達を見かけるようになり、あの三角錐の赤いのは何か調べてみました。
今回の公式マスコットの名前は、『フリージュ』フリジア帽が語源だそうです。遡る事、古代ローマ時代に解放され自由を手に入れた奴隷が、被っていた物でフランス革命の際も革命家たちが自由の象徴として被っていた帽子だそうです。
その形をアレンジしてキャラクターになりました。フリージュは、2本の足の物と片足が義足の物があります。開会式のオープニングには、車体全体にフリージュが着いた赤い車が登場して歓声が沸きました。ちなみに車両はTOYOTA の「MIRAI」でした。選手入場時には中央ステージにフリージュが大挙して現れ、各国選手団を出迎えました。フリージュはスポーツで革命を起こすという使命があるそうです。マスコットにも革命の使命を与えるとは、フランスは本当に革命がお好きなお国です。
神ベッド
オリンピック期間中、知り合いのジャーナリストから「こんなベッドで寝ています」と画像が届きました。
日本と時差があり毎日超ハードワーク。その上短い睡眠時間。そんな時に「このベッドで本当に幸せ」「ぐっすり寝れています。紙でできた神ベッド!」と喜びの声を聞きました。
数年前のメゾンエオブジェ(家具雑貨小物の大展示会)で 日本のair weaveエアウィーヴ社のこのベッドマットレスを取材したことを思い出しました。あの時 東京オリンピック・パラリンピックの選手村で使用されていたと知りました。
今回のパリオリンピック・パラリンピックではメディア村を含むに選手村全床に16,000床もの寝具サポーターが提供されています。
それで選手達は、自分の体にフィットしたカスタマイズマットレスで良質な睡眠を手に入れました。選手村には、フィッティングセンターがあり、身長、体重、性別、年齢を入力し、全身の写真を2枚撮影するとその選手用のマットレスの硬さパターンを瞬時に判定できます。
硬さは4段階、表裏で硬さの異なる3つのブロックを組み替えることで一人ひとりに合わせてカスタマイズできます。今までのオリンピックでこんな素晴らしい寝具があったでしょうか?
選手達のベストパフォーマンスを「睡眠の質」でサポートする。なんとも日本企業の細やかな心遣いを感じました。
air weave 社は大会後、16,000床をフランス国内の団体や教育機関に寄贈し、無駄は出さない配慮をしています。